21世紀の新視点

主に日米の国際情勢を解説していきます。

手放しで喜んではいけないマティスの尖閣発言

 今月3日、トランプ政権下で国防長官に就任したマティスが来日し、同日夕方に安倍と対談をした。ジェームズ・マティスはアフガン戦争などで活躍した軍人で、2005年に「戦うのは楽しい」という趣旨の発言をして世間を騒がせだ人物だ。しぶとく戦う姿勢から「狂犬」とのあだ名がメディアなどから付けられているが、プライベートでは7000冊もの蔵書をかかえ日々研究に勤しむ、非常に冷静な人物として知られる。

 

 ジェームズ・マティス国防長官は“生涯独身”の戦う修道士 | 日刊ゲンダイDIGITAL

 

 今日の会談で最も注目したいのは、尖閣諸島日米安保第5条の適用範囲内だとマティスが認めたことだ。第5条について改めて確認しておく。第5条には「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する」とあり、アメリカの対日防衛義務を定めた重要な項目である。

 

 米長官、尖閣に「安保条約適用」=核抑止力提供も確約-安倍首相、日本の防衛力強   化:時事ドットコム

 

 この第5条の適用範囲に尖閣諸島が含まれるのかという問題は、歴代総理と米政権の間の最重要事項の一つであった。例えば、2014年4月にオバマが来日した際、オバマ尖閣諸島が安保の適用化であることを安部と確認した。

 

 オバマ大統領が尖閣は安保条約の対象と明言、中国にも配慮 | ロイター

 

 以上のような経緯もあって、今回のマティスの発言は国内の対米追随派論者を安堵させたようである。しかし、マティスの発言は決して手放しで喜んでよいものではない。前述のオバマ来日のとき、オバマは日中の領土問題に踏み込まず、具体的な軍事介入について聞かれても答えなかった。アメリカの尖閣諸島への態度は非常に曖昧である。

 

 さらに、トランプは選挙期間中に日本の在日米軍駐留費の負担増額や、アメリカのアジア重視戦略であるリバランス政策を見直すことを示唆してきた。トランプは有言実行の人なので、今後明言通りにアメリカのアジアでのプレゼンスを下げる外交を行っていくかもしれない。そうなると、中国の横行がさらに手が付けられなくなる可能性もある。日本はこれを機会に、もう一度日米関係と自国の防衛について真剣に考え直す必要に迫られている。

 

 Listening:<記者の目>トランプ氏「米軍撤退」発言=宮城裕也(青森支局) - 毎日新聞

 What Will Donald Trump’s Asia Policy Look Like? | The Diplomat